山間の小さな寺。
表向きは格式ある僧院として地元では知られていたが、住職の杉田は裏で信者から金をむしり取る悪徳僧侶だった。
最初は小口の寄付を要求する程度だったが、次第に「供養しないと祟る」と脅し、信者の土地や貯金まで取り上げるようになった。
寺の収入は急増したが、地域では「杉田には近づくな」と密かに恐れられていた。
ある日、若い信者が寺に相談に訪れた。
「す、すみません……実は、今月のお布施や管理費が、どうしても用意できなくて……。少し猶予をいただくことは、できますでしょうか……?」
杉田は満面の笑みを浮かべ
「すぐに収めないと末代まで祟るぞ」と一蹴した。
だが、悪事は長くは続かなかった。
近隣住民が杉田の不正を警察に告発したのだ。
通帳や寄付金の領収書を調べると数千万円単位の横領が発覚。社会的信頼は崩壊し、新聞でも大々的に報道された。
裁判では、信者たちが次々と証言台に立った。
「祟られると脅されました」
「祖母の土地まで取り上げられました」
杉田は法廷で「私は仏の使いとして自らの使命を全うしただけ」と開き直ったが、検察の前では通用しなかった。
そして法廷を去る時は
「お前ら!こんなことをして無事で済むと思うのか!末代まで祟るぞ!!!」
と捨て台詞を吐いて去っていった。
結局、横領・脅迫・恐喝の罪で実刑判決。
寺は差し押さえられ、信者たちに返還されることになった。杉田は刑務所で年老いていった。
寺は取り壊され、跡地には小さな公園ができた。
今では「かつて悪徳僧侶がいた場所」として地元でも語り草になっている。



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