家の水道から変な臭いがする

怖い話

ある日から違和感を感じ始めた。

家の水から変な臭いがするようになった。

最初は気のせいかなって思ったけど、やっぱり気のせいじゃなくなって業者に見てもらった。


なんでもネズミの死骸が水道管に紛れ込んでいたらしい。


正直すごく気持ち悪かった。
でも業者は「まれにこういうことがあるけど清掃すれば問題ないですよ」と言ったので
その日はとりあえず安心した。



……けれどしばらくしてまた水が変な臭いを放ち始めた。

まただ。
前と同じ金属っぽくて生臭いような匂い。

蛇口から出る水は一見透明なのに
コップに注ぐとわずかに白く濁っている気がした。


もう一度業者を呼んだ。
だが今度は水道管も貯水タンクもどこにも異常がないという。




「動物の死骸なんてもう入る隙間ないですよ」




そう言われてもあの臭いは確かにしていた。


その夜風呂に入っているときだった。
湯気の中にふと腐った肉のような匂いが混じった。
嫌な気配を感じて思わず蛇口をひねった。



その瞬間――



黒い髪の束が湯の中に流れ出た。

ぞっとして飛びのいた。
排水口の中からゆっくりと何かが押し出されてくる。

髪。
皮膚のようなもの。
そして――白い指。

その指先がわずかに動いた。

悲鳴も出なかった。
慌てて元栓を閉め風呂場から逃げ出した。


翌朝業者を呼んだ。
排水管を外して確認したが「何も出てこないですよ」と首をかしげるばかり。

だが一人の作業員が青ざめた顔で俺を見た。

「……あんたこの家の水どこから引いてます?」

「普通の市の水道ですけど……」

「これ……住宅の地下もう一本管が通ってる。
 けどこれ……どこにも繋がってないんですよ」




その夜。

蛇口を閉めても台所のシンクの下から――

コポコポ……

と水が流れるような音がした。

それはまるで
誰かが“中から蛇口を叩いている”ような音だった。

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