史上最悪の老人ホーム

怖い話

この事件が明るみに出たとき
誰もが信じられないと思った

実際の内容を聞いた誰もが絶句したのだ。

事件が起きた老人ホームの名は「第二希望の園」。

第一がどこにあるのかは誰も知らない。


施設は古びた山奥に建てられ、
「自然と共に老後を過ごせる」が売り文句だったが
実際は自然どころかほぼ野戦訓練場だった。

入居初日に配られるものはお茶・毛布・そして“木製のこん棒”。

一緒に渡されるガイドブックにはこう書かれていた。



「他の入居者があなたのご飯を狙うことがあります。自己防衛を心がけましょう」



昼食はもはや争奪戦だった。
スープ一杯のために歩行器同士のガチンコバトルが勃発。
“飯ドン”というスラングまで存在した。

午後のレクリエーションは体操ではなく決闘。
職員がホイッスルを吹くと入居者たちはリング(元食堂)に集められ、相手を投げ飛ばすたびに「介護ポイント」が貯まるシステムだった。

ポイントが一定に達するとトイレットペーパーが1ロール支給される。
老人達は景品に弱い。
目の色を変えて打ち込んでいたという。


しかし最も恐ろしいのは夜の見回りだ。

消灯後、廊下を歩く足音。
懐中電灯の光が部屋のドアの隙間をかすめる。
「職員かな」と思うと違う。

なんと入居者たちが夜な夜な脱走者を探しているのだ。

もちろん脱走者を見つけた者には多額のポイントが付与される。
そしてプリンも貰えるそうで老人たちは本気だった。

翌朝、ベッドが一つ空いていると誰も何も言わない。
ただ静かにそのベッドが“新入り用”に整えられるだけ。

職員たちはと言えば
毎朝「みんな元気に争ってますかー!」とハイテンション。
日誌の項目には“健康状態”ではなく“勝率”の欄がある。


ある日、役所の職員が監査に来たとき職員全員が笑顔で言った。

「あ、今日はデモンストレーションデーなんで。」

そして役所職員は見た。
杖を構えたおじいさんとおばあさんが、
「昨日のプリン返せえぇぇ!」と叫びながら取っ組み合っているのを。


自然のままにというフレーズという理念によって家族は入居者と面会することは原則禁じられていた。

そして何よりも老人を世話できなくなった家族達が暗黙の了解で実態を承知の上で預けているというのも今までこの劣悪な実態が明るみに出なかった要因でもある。


ニュースでは「劣悪な環境」と報じられたが入居者の何人かはこう語った。

「まあ、刺激があるだけマシだ」
「家にいた時より、今の方が生きてる気がする」


事件後、施設は閉鎖された。
だが廃墟になった建物の前には今も小さな立て札が残っている。

第二希望の園
~命の輝きを最後まで~

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