【殺人ビーダマン事件】改造された懐かしのオモチャの恐怖

怖い話


最初の発見は郊外の寂れた商店街だった。

シャッターが並ぶ通りのベンチに懐かしいオモチャ「ビーダマン」がぽつんと置かれていたのだ。

青いボディに丸い瞳。
子どもの頃に誰もが一度は手にしたことがある玩具。

ビー玉をセットすれば「カチリ」と音を立てて装填される――あの仕組み。

通りがかった男性は懐かしさに惹かれて拾い、冗談めかしてトリガーを引いた。


直後、乾いた破裂音。
金属玉が彼の顔面にめり込み、悲鳴とともに地面に倒れ込んだ。



「オモチャが、人を撃った――?」



その場にいた人々は信じられず、ただ立ち尽くすしかなかった。

数日後、今度は駅前の広場で同じように「ビーダマン」が見つかった。

拾い上げた女性は胸を撃たれ、そのまま即死。



警察は混乱した。
子どもの遊び道具がなぜ人を殺せるほどの威力を持つのか。

鑑識の調べで判明した真実は恐ろしいものだった。

内部のスプリングは工業用に置き換えられ、さらに小型の CO₂カートリッジ が組み込まれていた。

撃ち出されるのはガラス玉ではなく、鉛を含んだ金属球。

それはもうオモチャではなく、兵器だった。

事件と同時期、ネット上には奇妙な書き込みが広がっていた。



「ビー玉は銃弾よりも速く飛ぶ」
「無害な玩具の殻に潜む狂気」
「ビーダマンは最初から危険だった」



発信者の名は B-D-KING。
追跡の結果、その正体は40代の元工員であることが判明した。

かつてビーダマンの製造に携わったが、安全性の問題を訴えても会社に無視されやがてリストラされた男。

そして彼の過去にはさらに暗い影があった。
少年時代、改造ビーダマンで友人を失明させてしまったこと。

その罪悪感と孤立が長い年月を経て、やがて「社会への復讐」へと変貌していったのだ。



警察が突入したアパートの一室は異様な光景だった。

壁に並ぶ無数の改造ビーダマン。
スプリング式、ガス式、電磁式――中には「フルオート連射型」と刻まれたものまであった。

工具と金属片に囲まれ、男は静かに語ったという。



「オモチャだからって安心するだろ。
 でもな、“オモチャは無害”なんて、誰が決めた?」



犯人は逮捕され、凶悪な「殺人ビーダマン」はすべて押収された。

だが、街角に置かれたただ一つのオモチャが人々の心に植えつけた恐怖は消えていない。

――それは懐かしい玩具なのか。
それとも怨念を宿した兵器なのか。

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